リコリスと日々
日記用ブログです。ネタバレなどは発売日から解禁中。
薄桜鬼詰め合わせ1(1)
- 2010/11/28 (Sun)
- 小話 |
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前にちらっと言った詰め合わせ。
しかし詰め合わせるつもりだったのが長くなってしまったので、結局三話分割になりました。
※斎藤×千鶴
※謎のパラレル
※政略結婚させられそうな女の子と大脱出劇な話
※でも途中から
※友情出演:土方、沖田
※一君が羅刹っていうか人間を超越しすぎた何か
※かなりご都合主義
※薄桜鬼はメインストーリーしかやってない(随想録とか黎明録とかやってない)ので、その情報だけで書いてる
→なので何かおかしいところあるかもしれない
それでもいいよ!笑って流せるよ!って方はどうぞ。
曲がり角を曲がったら、銃声が背後を通り抜けて行った。
標的を失った銃弾がまっすぐに壁に突き刺さるのがわかる。
反射的に振り返ったけれど、繋いだ左手を引かれて、私は再び前を向いて走った。
迷路のような廊下を駆け抜けていけば追手の姿も足音も消えていく。何とか振りきったのだろうか。けれどこの城にいる限り安堵など出来ず、足を止めることはできない。
早く逃げ出さなければ。その一心で走り、階段を数段飛ばしながら駆けあがる。
その先では重たげな扉が少しだけ開いていた。
「あそこだ。行くぞ」
「っはい」
苦しい呼吸の下で何とかそれだけ返す。すると返事に被るようにして足音が響いてきた。
見つかってはいけない。焦りが足を縺れさせそうだ。
一瞬片足が妙に軽くなった気がして、何かが転がる音がしたけれど、構わず前だけを見つめた。
数段なのに長く感じられる階段と、数歩分の踊り場を全速力で駆ける。
滑り込むようにして扉の向こうに身を隠すと、錠が落ちる鈍い音がした。
するとそれまで聞こえていた喧騒が、全て薄皮一枚隔てた向こうの世界の出来事に変わる。
「大丈夫か」
「斎藤さん……はい、大丈夫……ですけど、」
言いながら私は右足に視線を落とす。
やっぱりあるべき筈のもの、履いていた靴がない。
さっき片足が軽くなった気がしたあの時。あそこで落としたのだ。
「途中で落としたんです。さっき、階段を上る時に」
「怪我は」
「平気です。ただ片足だとやっぱり走りにくいですね」
幸いにも場内が綺麗に清掃されていたお陰で、鋭いものを踏むこともなく、足に傷はなかった。
左の靴も脱いでしまおうか。靴の踵に手をかけた瞬間、身体がふわりと浮きあがった。
「え、ええええ?! ああああの、私自分で歩けるので……!」
抱きかかえられているのだと気付くと、急に頬が熱くなる。
妙に恥ずかしくなって、慌ててそう言ったけれど、全く譲ってもらえない。
「片足だけだと走りにくいのだろう」
「でも怪我をしたわけじゃないですし、裸足になれば平気ですから……!」
「それでは怪我をする」
「けど、私を抱えてたら、走りにくいじゃないですか」
「問題ない」
だけど、と更に続けようとした私の言葉を奪ったのは、閉めた扉の向こうから聞こえてきた微かな喧騒だった。
ここで立ち止まっている時間は、もうない。
「行くぞ。掴まっていろ」
「え?」
降ってきた言葉の意味を問い返す間もなく、世界が動く。
横向きに流れる世界に違和感を覚えながらも、私は自分を抱きとめている腕の中から落ちないように、斎藤さんの首に腕を回した。
点々と明かりがともる廊下を走る。耳元を風が抜けていく。
それに混じって、扉が開く音が聞こえた。すると、さっきまで壁一枚隔てていたはずの騒音が、同じ空間に流れ込んでくる。
開いたのは、あの錠を下ろした扉だ。
理解した瞬間、呼吸が止まる。
更にもっと嫌なことに、廊下には続きがなかった。
「斎藤さん……」
不安になって、回した腕に少しだけ力を込める。
見上げた瞳は、焦りも微かにあったけれど、それ以上に確信めいたものが見て取れた。
それが何なのか私にはわからない。
けれど、彼は迷いなく一番奥の部屋に飛び込んだ。
客間、なのだろうか。
一目見て高級とわかる調度品が並べられた部屋は、幸いにも誰もいなかった。
斎藤さんはそのまま外へ続く扉を開けた。
その先には開けた空間があって、きっと普段はここで茶会でも開かれているのだろう。
石造りの柵に近づけば、屋敷の外がよく見えた。車を回す通路が真下に見える。
飛び降りようと思えばできない高さでもないけれど、事実上ここが行き止まりだった。
「あの、」
これからどうするのか。私の問いかけは、夜を切り裂いて響いてきた声にかき消された。
「斎藤!」
「え、土方さん?!」
知った声に私が返事をしてしまう。
こちらに向かってくる、天井のない車がある。その助手席にいる黒髪の人は間違いなく彼だった。
「しっかり掴まって、口は閉じておけ。舌を噛む」
「え?」
突然降ってきた言葉に、意味がよく理解できないまま従う。
ぎゅっと唇を弾き結ぶと、斎藤さんは数歩下がって、それから徐に駆けだした。
世界が揺れる。それから、一瞬の浮遊感。落ちていく感覚に目をつぶる。
振動が全身に走った。
「……?」
ぱちりと目を開けると、暗い空とさっきまでいた場所が見えた。
見れば、ここは車の後部座席だ。
それを認識すると、私は自分がどんな体制なのかを思い出し、慌てて斎藤さんから身を離した。
「二人ともお疲れ様。よく頑張ったね」
運転席からこちらを振り返ったのは沖田さんだった。
「あ、あの、これって……」
「あれ? 一君から聞いてない? 全部計画してあったんだよ、君を連れ出すために」
「……そうなんですか?」
私は斎藤さんの方を向いて訊ねる。
「……言わなかったか?」
「……他の方がいらっしゃるとは、聞いてませんけど……」
「酷いなあ。自分だけの手柄にするつもりだったの?」
「……すまない。ただ……、」
連れ出すことばかりに気をとられて。
その言葉を聞いて、沖田さんが笑いだした。
「本当、一君って千鶴ちゃんが絡むと変わっちゃうよね」
「おい総司、お前ちゃんと前向いて運転しろ」
ちょこちょこと後ろを向く沖田さんに、とうとう助手席の土方さんから叱責が飛ぶ。
返事の言葉はいつも通り何処か軽薄な感じがした。
「それより後ろ、来てますよ」
「わかってるよ」
後ろ、と言われて反射的に振り向く。
暗がりに点る二つの光が見えた。
助手席に乗っている人の姿が見える。
月明かりに煌めく金髪。私が斎藤さんを選ばなければ、私が結婚する筈だった人だ。
「ちょっとここらで止まってもらわねえとな」
「僕に運転させてる分、しっかり働いてくださいね」
「言われなくてもきっちり当ててやるさ」
土方さんの片手にある銃が、月明かりに反射する。
彼はそのまま横から身を乗り出すと、後ろに向かって引き金を引いた。
響く銃声に思わず耳を塞ぐ。
すると一度は離れたはずの腕が、再び私を抱き込んでくれた。
重なる温度にいくらか安心する。そう思った瞬間に、ブレーキの音がけたたましく響いた。
「……流石です、土方さん」
頭の上で、斎藤さんが言うのが聞こえる。
彼の腕の中からそっと頭を上げると、後ろにあった光はもうない。代わりに不自然な向きに止まった車の姿が月明かりに照らされていて、そこからの距離がどんどん伸びていることがわかった。
「ま、こんなもんだろ」
助手席で呟いた土方さんは、私の視線に気付いたのか、
「安心しろよ、別に殺したりしてねえ。ちょっとタイヤをパンクさせただけだ」
「あ……」
私の欲しかった答えをさらりと言ってくれる。
追ってきた相手とは言え、別に命が欲しいわけではない。
「それじゃ、今のうちに行こうか」
車の速度が上がる。さっきまでいた屋敷が小さくなる。
離れていくそれを一度だけ見てから前に向き直った。
「連れ出して下さってありがとうございます、斎藤さん」
今も私をしっかりと抱きとめてくれている人の、青い目をまっすぐに見つめる。自然と肩の力が抜けて微笑むことが出来た。
すると向こうも同じように笑ってくれて、何かを耳元に囁いてくる。
夜風にまぎれそうなほど微かな囁きを聞きとると、私は何度か瞬きをした。
伝えられたのは願い事。それは別段おかしなものでもないけれど、彼がそんなことを自分から言うのは少し意外な気もした。
何といっても線引きに厳格な人だから。
(ああ、でも)
もうその線もないのか。
急速に変わった世界を、本物だと言うように。
私は初めてその名前を呼んだ。
「ありがとうございます……一さん」
※普通は二階から人一人抱えて飛び降りたら怪我の一つはします
ところで前から思ってたんだけど、異常な回復力を持ってるキャラって、作中で回復するのは裂傷とかだけど、骨折も治るのかな。
何にせよよくわからんパラレル。長かった!荒削りでごめんなさい。
斎藤ルートやってたら、「これ、政略結婚させられそうな女の子を連れて逃げるゲームなのか?」と思ったので、時代とか舞台とか変えて考えてたら変なパラレルになりました。
以下言い訳的な何か。
・やりたかったこと→車に飛び移って逃げるシーン。
・逃亡役が平助だったら、運転士は新八で車はトラックで荷台にダイビングで決まりだろ!とかも考えたけどそれはいつか書くのかな……書かないのかな……
・荷台に飛び降りた方が現実的なんじゃ、って気もするけど荷台だと普通に後ろから撃たれるよね。でも普通に後部座席に飛び降りるのも難しいよね。そんな感じでもだもだ考えた。
・どうにかうまくまとめようと、オープンカーの作りとか屋根開く車とか調べてみたけど、何かもういいかって思ってこうなりました。
・クッションがめっちゃ敷いてあったんだよ←無理な言い訳
パラレル大好きでごめんなさい。
その他設定的な意味での言い訳↓
何で靴が脱げるの→イメージがシンデレラだったから
配役何ぞ
→土方さん……中の人ネタ+某少年漫画繋がりネタ
→沖田……何となく
→風間……通常運転
名前出てないけど風間いるよ!追っかけてくる車の助手席のが風間だよ!
あと友情出演予定だった不知火が迷子になった。一番最初に銃打ってる追手が不知火の筈だった。名前が出せなかった。ごめん。
お屋敷イメージは洋風だったんだけど、登場人物の名前が和風で、噛み合ってないねって全部終わってから思いました。気にしないでください。
BGMはロミオとシンデレラとかサンドリヨンとかカンタレラとか。
中身全然共通点ないですが、お城とか姫とか貴族とかそんな感じのイメージの曲が聞きたかった。
ロミオと~は通常版とアナザーと両方聞きました。でも別に通常版が千鶴ちゃんっぽいとか、アナザーが一君っぽいとか、一切ないけど!
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